福島の子どもたちを守る会 北海道蘭越 今年の夏の報告 2014年


2011年夏以来、今度で9回目の2014年夏の福島の子どもたちの保養が終わった。

 

13家族。総勢38人。大人14人、子ども24人。

 

親子の保養を受け入れている「福島の子どもたちを守る会・北海道」は、福島第一原発の過酷事故を受け、2011年6月札幌の有志で結成された。以後、賛同者や寄付金を集め、毎年の、主に春と夏休みに保養を行ってきた。最近では、保養の受け入れ団体も減少傾向にある一方、保養の希望者は時間とともに増加。2013年4月、会をNPO法人にし、活動の充実を図った。

 

保養の目的は、原発事故で放出された放射能による健康被害の軽減にある。短期間の保養でも、体内の放射能を軽減できることは、チェルノブイリの原発事故以後の保養活動で証明されている。

 

また、福島では、未だに、農産、海産物等の摂取制限が続いており、特に、台所を預かるお母さん方の苦労は並大抵ではない。母親のそうした不安と子どもの健康被害を少しでも軽減できたらという思いで、会の活動は続いている。

 

2014年7月26日午後2時、生憎の雨の中、倶知安町ヒラフにあるコンドミニアム「山自然」(北海道トラックス)に、福島の親子を乗せたバスが到着した。25日、会がチャーターしたバスで県内のいわき市や郡山市などの待ち合わせ場所に寄りながら仙台港からフェリーに乗り、26日午前11時苫小牧港に到着。倶知安へ。長旅のせいか、みんなやや疲れ気味。それでも、待っていたボランティアの蘭越高校生たちの出迎えもあって、子どもたちはバスを降りるやいなや、あちこち走りまわり始め、リピーターの家族とは再会を喜びあった。バスの荷物ブースから出てきたそれぞれの家族の大きなスーツケースが出てくるは出てくるは、その数の多さにびっくり。高校生が荷物を各部屋に運搬。その後、いったんスタッフルームに全員集合して自己紹介。福島の参加者の最高年齢65歳。最小年齢は生後6ヶ月の赤ちゃん。

 

今日の夕食は、表でバーベキューを食べる予定だったが、雨が止まない。テントやイス、テーブルを用意したが、結局、コンロで焼くだけ焼いて、部屋に運ぶことになった。運ぶのは高校生。なかなかいっぺんに焼けず、早くとか、いろいろ混ぜて焼けとか、それでもなんとか総勢38人の福島の親子と10人近くのボランティアの腹を満たすことができた。コンドミニアム「山自然」での食事は、食材は守る会で用意し、朝は福島のお母さん方がそれぞれ作り、昼食、夕食はボランティアのお母さん方が作ることにしていた。

 

保養2日目の7月27日。今日の予定は蘭越町のせせらぎ公園で開催される「せせらぎ祭り」。朝ご飯は、各棟ごとに福島のお母さん方でそれぞれで用意し、食べた。朝から雨。「せせらぎ祭り」は開催されるという情報を得て、9時20分宿舎を出発。蘭越町営の大型バスに乗り込んだ。

 

まず行ったのは町営の貝の館。ニセコ方面で保養をやる時は、ほとんど必ず寄るところ。日本海に面した海岸ふちにあり、珍しい貝がたくさん展示されている。まず、入り口の正面の巨大な巻貝に度肝を抜かれる。山崎学芸員の案内で、ミニシアターで3D映画を観たり、いろいろな貝の説明を受け、みんな楽しそうであった。期間限定で展示されていた、貝殻が鉄で出来ている貝にみんなびっくり。

 

雨も少し小止みになり、1時間ほどで貝の館を後にした。10分ほどで「せせらぎ祭り」会場に到着。雨もなんのその、子どもたちは一斉に会場へ。ただ、会場が尻別川河畔の広大な河川敷。どこになにがあるのか、見渡してもわからない。最初のコーナー「体験・ゲームコーナー」で子どもたちの足が止まった。ちびっ子消防士のコーナーでは、実際にミニ消防服を着てホースを握れるというので、特に幼児たちちびっ子に人気。次がサッカーボールで的板を打ち抜くゲーム、次が野球のボールで的板を打ち抜くゲームは小学校中、高学年が夢中。昼食はお祭り会場の出店で食べる予定だったが、それぞれ何を食べたかは不明。雨も降ったり止んだりで、午後2時半過ぎにはバスに乗って町営の温泉「幽泉閣」に向かい、お風呂に入る。午後4時過ぎに宿舎に戻る。夕食は各棟ごとで食べることになり、また、高校生が出来上がった食事を運搬。階段を行ったり来たり。

 

保養3日目。今日は一日自由時間。各自どこで何をしても良い日。子どもたちは宿舎の近くの公園で、高校生と遊ぶことになった。ボランティアのおじさん(おじいさん?)は見守り役。結構暑かった。午後、倶知安のボランティアの方がセラピー犬を連れて来て子どもたちと一緒に遊んだ。

 

保養4日目。今日も一日自由時間。公園の中に人工的に作った滝と小川と池があり、何人かの子どもたちが遊び始めた。一人の男の子が片手になにか、縄のようなものを持って叫んでいる。良く見たら、蛇の抜け殻だった。後で聞いたら、家まで持って帰ったそうだ。子どもが遊ぶ、良くある風景だが、今の福島では、外では遊べない。土や草にも触れられない。食品もできるだけ県外産を選ぶ。気にしていない人もいるが、母親の心労は計り知れないものがある。

 

保養5日目。今日は、ヒルトンホテルに隣接する自然体験遊具施設「ピュア」で一日遊ぶ。夏のニセコエリアでの保養では、毎年必ず招待を受けている。リピーターの家族は前に体験しているので、この日を楽しみに待っていたらしい。ホテルに到着すると、玄関前の芝生で、ホテルの主だった方々とみんな揃って記念撮影。「ピュア」の係りの方から、遊び方のレクチャーを受け、話もそこそこにみんな散らばった。一番人気は高いところに張り渡されたロープを伝っていく空中散歩。高校生も子どももお母さんも、顔をみたら真剣そのもの。なかなか前に進めない子もいた。お昼はホテルで用意してくれたバーべキュー。北海道の野菜、肉、飲み物でおなかいっぱいになったところで、再び「ピュア」にチャレンジ。あっという間に一日が終わった。宿舎に帰り、夕食後、最後の日ということで、蘭越高校生による紙芝居「ガリバー旅行記」・他が上演された。子どもたちは最後までしっかり見入っていて、終演後、大きな拍手が送られた。

 

6日目。今日は、札幌へ移動する日。見送りに来た高校生の手で各部屋から荷物を出し、表通りまで運び、バスに積み込む。「また、おいで――!」。手を何度も振りながら見送った。この後、札幌の定山渓「渓流荘」に8月7日まで宿泊。滞在中、札幌市内の病院で、甲状腺検査と尿検査を行う。ちなみに今現在の福島のこども27万人を対象にした甲状腺検査で、103人が甲状腺ガンおよび疑い濃厚と診断されている。通常では、100万人に1人とされているのに。検査の合間に市内見学。8日19時に苫小牧港を出港。9日中にはみんな無事に家に辿りついたとのこと。

 

保養にかかわった蘭越のボランティア、蘭越高校生11人。一般16人。なお、多大なご協力いただいた蘭越町役場、幽泉閣、貝の館、蘭越高校、花一会、ヒルトンホテル、また、野菜の提供、手づくりケーキ、値引き、トラックの提供、寄付など、毎回いろいろな形でご協力を戴いている多くの方々に感謝。

 

福島の原発事故から3年半が経ち、事故や現状を伝える新聞・テレビもほとんどなく、忘れさられようとしている。未だに収束の目処が立たず、放射能汚染が続いている福島。子どもを疎開させよという第2次裁判が始まっている。限られた予算の中、多くの方々の思いを集め、子どもの未来のために、会の活動は今後も続いて行く。

 

追記 期間中、新聞記事を見て、メロンとスイカを差し入れしていただいた岩内町社会福祉協議会センターのみなさんに感謝。

 

 

2014年9月10日

 

NPO法人 福島の子どもたちを守る会・北海道 蘭越支部  高田 道雄